自分が描いている漫画の話を時々できたらなと思っています。
今回は「あばらの音」についてです。
結構長いです。
よろしくお願いします。
元々コミティアに出すつもりで描いていたんですが、ちょうどコロナが流行り始めた時期で
コミティアそのものが中止になったり次回開催があるかどうかも分からず
先行きが見えない状況となり、本にするのを諦めました。
本の表紙に使おうと思っていた絵です。名前がまだひらがな表記です。
最初は「骨まで愛して」というタイトルだったのが
色々考えて「あばらの音」に変わりました。
堀辰雄の「僕は」という詩があって、その中に「骨のヴァイオリン」という単語が出てくるんですが、肋骨の事らしいんです。
骨って直接触りたくても触れないし、肉眼じゃきちんとした形を見ることもできなくて、
でも手の甲の骨の凹凸や、くるぶしの骨の形を、太さや密度を確かめるように握ったり触ることはできるなと思ったんです。
肋骨に触るってことはその人の胸元に、肌に直接触れないといけなくて、
それって特別な関係じゃないとできない事だよなと考えました。
お互い見つめ合って互いの肌に触れ、
心臓の鼓動と、呼吸する胸の動きと、わずかに波打つ肋骨を指で辿って、
相手から零れる「音」を聞き逃さないように、息さえ忘れて心の底を覗くようにじっと
見つめ続けるのかもしれません。
爪先でひっかくように、ささくれて剥けて硬くなった皮膚に引っかかれて、指の腹でなぞるように触れた時の「音」がため息のように切ないのか、油断してた鼓膜を溶かすように甘いのか、
それを知っているのは自分だけ、という関係性にしたいなと思って
タイトルに持ってきました。
「骨折り損の君だけ抱いて」とかも考えましたが却下しました。
カケアミ全部描いている!狂気!
睦巳は祖父の死をきっかけに人の骨に興味を持つようになりますが、
フェチと言うより病的なイメージです。
祖父の葬式で、こっそり遺骨のひとかけらを持ち出し今も持っています。
自分の身内の葬式を思い出しながら描いてたんですが、
さっきまであった「外側」が焼け落ちて、骨だけになってしまったのを見た時
めまいがしたのを覚えています。
それだけ衝撃的で、悲しいという感情さえ消えてしまうほどでした。
橋でつまんだ骨の軽さ、言葉にできない匂い、手術で埋めた金属のボルト、
鮮明に脳に焼き付いています。
骨壺に収められるときに、蓋が閉まるように砕かれる骨の音を、今でも思い出します。
睦巳は祖父の死後、人の骨に興味を持つようになり、すれ違った知らない人の脊椎や指の太さを目で追っていたり、骨が鳴る音に耳を傾けてしまいます。
小学生の頃には祖父の遺骨を学校に持っていき大騒ぎを起こしました。
その後不登校になり、近所の人たちにも噂され一時期一切外に出なくなっていました。
今まで両親に迷惑をかけた申し訳なさから必死に勉強し進学校への入学を果たします。
本来であればもっとレベルの高い学校に進学できるほどの頭脳の持ち主ですが、
昔の顔なじみに会いたくないからという理由を優先し、
家から離れた学校を選んでいます。
睦巳自身は静かで控えめな性格です。人前で話すのが苦手ですが、自分の意志がないわけではありません。クラスの誰かが掃除をサボれば誰も見ていないところでひとりでやったり、
滅茶苦茶になっている図書室の本を元通りに直すようなそんな性格です。
クラスメイトからは大人しい地味な奴と思われており、これと言って特別視されていません。睦巳自身もそれでいいと思っています。
前髪で顔半分を隠しているのは、自分の内側を見透かされたくない、という気持ちからです。綺麗な顔立ちをしている為、一部の女子から密かに人気です。
恒孝はバレーボールをやっていますが、ちょうどこれを描いてるとき整体に通っていて、
整体師の先生と骨の話を色々しました。骨って鉄と似ているそうで、衝撃を受けるほど強くなるそうです。
ジャンプをして着地をする、というような動きをするといいらしく、
そういう動きが多いスポーツってなんだろうと考えた時に思いついたのがバレーボールでした。バレーをすれば背が伸びるという訳ではなく、そもそも背を伸ばすための明確な手段は無いそうで、あくまで「きっかけ」だそうです。
受けていた施術が骨をどうこうするというより、下がった内臓の位置を元に戻すというもので、結構痛いんですけど、終わった後立つと今までと全然違っていて、
内臓が元の位置に戻るのでバランス感覚が変わってまっすぐ歩けないんです。
恒孝の父はバレーボールで日本代表を目指していましたが怪我で断念し、その夢を息子に託しました。が、恒孝自身の意思で始めたわけでは無いので特別楽しいと思っていません。
元々運動神経がよく、父親譲りの高身長ということもあり、試合でも活躍していましたが、周囲のチームメイトからの僻みや嫌がらせも受けていました。
高校に入学する際もクラスメイトからの「勉強しなくても運動できるだけで進学できるって羨ましい」という心無い一言を浴びせられています。
私の周りにも同じことを言われている人がいて、正直怖かったです。
自分自身運動が苦手なので、スポーツが出来るという事自体凄いと思っていたので、
そんなこと言う人がいるんだな、と悲しくなりました。
バレーを続けていく中で、元々持っていなかった熱意はどんどん消え失せ、
周りから小言を言われないようにするためにバレーをするようになっていきます。
「エース」と呼ばれることも大嫌いで、周囲からはバレーの事一筋の人間と思われていることも心底嫌がっています。バレーの事となると見境がないとか、裏ではチームメイトに偉そうにしているなど根も葉もないうわさなども流され、
人に対して本音を話すという事を一切しなくなります。
目の前で笑っているこいつも、どうせ自分の事を変な目で見ているんだろうと考えているので、笑顔も嘘くさいです。本来は穏やかで優しい性格ですが、どこかひねくれたような部分もあります。「バカ」とか「クソ」とか普通に言うので、驚かれたりします。
個展用に改めて描いた二人です。全然違う!!
この二人の関係性は、肉体的というより精神的な結びつきにできたらいいなと思っています。
恒孝と睦巳は席が隣になってから関係が始まりますが、逆を言うとそうならなければ接点すら生まれなかったかもしれない二人です。
もしかしたら睦巳が恒孝の骨に惚れてどうこうなったかもしれません。
「無言の時間があっても苦じゃない人」って素敵だと思うんですけど、この二人はそんな感じです。
恒孝の周りにいたのは、「自分の事をイメージで勝手に決めつける人」だったので、
睦巳のような「自分の内面を見てくれる人」には初めて出会いました。
睦巳自身も自分の過去や内面に暗いものがあるので、人の気持ちの変化に敏感です。
そのため、触れてほしくない話題や言われたくないことを感じ取って
考えながら話してくれる睦巳に、恒孝も素直に心を開いていきます。
きっかけがなければ話すこともなかったかもしれない二人に恋愛していてほしいなと
思います。
睦巳は見かけに反して声が結構低く、恒孝はその声を聞いているのが好きです。
時々詩の朗読をしてもらったり電話したりしています。
恒孝の手の骨を見ているのが好きな睦巳は、時々手の甲の骨の凹凸を触らせてもらっています。本当はどさくさに紛れて繋いでみたいなと思っています。
手を繋ぐとき恋人つなぎをするのが好きで、何度も指を組み替えたりして恒孝の骨を触って楽しんだりしています。
みっしりと詰まった腕の骨を触ったり、手の甲を指先で強く握ったり、
それに応えるように握り返す恒孝の優しさが好きです。いつか鎖骨に触りたいと思っていますが恥ずかしくてまだ言えていません。
恒孝は睦巳に触られるのが嬉しいので好きにさせています。
恒孝からも睦巳の頸椎やあごの骨を触ったりすることがありますが、
睦巳があまりスキンシップ慣れしていない為恥ずかしそうにしているところを見ているのが
好きです。
睦巳が非常に痩せ型なので、恒孝からすれば抱きかかえるのは楽勝です。
家に遊びに来たときなんかは抱きかかえたままゲームしたり漫画を読んだり昼寝したりしています。
睦巳もだんだんそれが普通になっています。
睦巳の腕の細さを見て、自分が力いっぱい握りしめたら簡単にへし折ってしまうんじゃないか、という言葉にできないぞくぞくした気持ちを感じたこともありますが、
睦巳には内緒です。
付き指を繰り返し、いびつな形になった自分の指が嫌いだった恒孝も、睦巳が愛おしそうに撫でるのを見るたびに嫌いな気持ちが薄れていきます。
恒孝も睦巳の色白でほっそりした指が好きで、ピアノが似合いそうだから、弾けなくてもいいからピアノの鍵盤に指を置いてほしいと思っています。
アクセサリーになんて興味がなかったけど、睦巳が指輪やブレスレットをしているところがみたいという理由で雑貨屋に行ったりしています。
わざと左手の薬指じゃないところにはめさせているのは睦巳には内緒です。
個人的に気に入っている漫画なので、
もしいつか本にする機会があったら、製本したいなと思ってます。
凄く長くなっちゃった
読んで下さってありがとうございました。
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